ワンちゃんとネコちゃんのお腹のトラブル ―⻑引く下痢―

【こんなことはありませんか?】
• 下痢が⻑く続く、または繰り返す。
• 嘔吐が頻繁に認められる。
• ⾷欲が落ちてきた。
• 体重が減ってきた。
• 元気がない。
• お腹がゴロゴロ鳴る。

以下に該当する場合 → すぐに受診してください。
• ぐったりしている
• ⽔が飲めない。
• ⿊い便、または⼤量の⾎便をした。
• 嘔吐が複数回。
• 体重が急に減ってしまった。
• お腹が張って苦しそうにしている。
• ⼦⽝・⼦猫、⾼齢の⼦で症状が続いている。

【この記事のトピック】
下痢はよくある症状ですが、2〜3 週間以上続く、または良くなったり悪くなったりを繰り返す場合は「慢性下
痢」の可能性があります。慢性下痢には、⾷事との相性、寄⽣⾍・感染、腸の慢性的な炎症、膵臓や他の臓器の
問題など、複数の原因が関わることがあります。早めの診察と、段階的な検査・治療が⼤切です。

【原因として考えられること】
慢性下痢の原因は1つとは限りません。代表的には次のようなものがあります。
• ⾷事関連:⾷べ物が合わない、急なフード変更、おやつの影響などによるもの。
• 寄⽣⾍・感染症:検便で⾒つかりにくい場合もあります。
• 腸の慢性炎症:いわゆる「慢性腸症(慢性炎症性腸疾患を含む)」を指します。
• 膵臓や他の臓器の問題:消化を助ける働きの低下などにより⽣じます。
• 腫瘍や内分泌疾患:年齢や症状により鑑別が必要です。

【診断のための主な検査項⽬(当院の場合)】
※患者様の状態、年齢などに応じて検査内容を決めていきます。
• 便検査
• ⾎液検査
• 腹部超⾳波検査
• 必要に応じた特殊⾎液検査
• 内視鏡検査/組織検査
など

【便の特徴からわかるヒント】
便の様⼦から、腸のどのあたりが主に影響を受けているか推測できることがありますので、どちらの傾向が強そ
うか確認してみてください。診察の際、診断の⼿がかりになります。
-おもに⼩腸の影響が疑われるサイン
• 便の量が増える。
• ⽔っぽい便が続く。
• 体重が減る。
など
-おもに⼤腸の影響が疑われるサイン
• 少量の便を何度もする。
• 粘液が混じる。
• 鮮⾎が混じる。
• いきんでも少ししか出ない。
など

【治療の基本⽅針】
慢性下痢は原因に合わせた治療が重要です。近年は、まず⾷事と腸内環境の⾒直しを重視し、必要に応じて薬を
追加する考え⽅が⼀般的です。
-⾷事療法
• 可溶性繊維と不溶性繊維を豊富に含んだ療法⾷
• 消化に配慮した療法⾷
• アレルギーに配慮した療法⾷
• 必要に応じた脂肪量の調整
など
-腸内環境のサポート
• 整腸剤
• プロバイオティクス/プレバイオティクス
など
-薬物療法
⾷事や腸内環境の調整で⼗分に改善しない場合、抗炎症薬や免疫を調整する薬を組み合わせることがあります。
抗菌薬は必要性を慎重に検討して使⽤します。

【よくある質問】
Q. しばらく様⼦を⾒ても⼤丈夫?
A. 気になる症状がある場合は、元気そうであっても早めの受診をお勧めいたします。
Q. 猫は下痢が⽬⽴たないこともある?
A. はい。猫では体重減少や嘔吐が主なサインで、下痢が⽬⽴たない場合もあります。「痩せてきた」「吐くことが
増えた」というサインもとても重要です。中には、腫瘍などの原因が隠れているケースもありますので、早めの
受診をお願いいたします。
Q. 内視鏡検査もお願いできますか?
A. はい。当院では内視鏡検査も実施可能です。状況や必要性に応じてご提案させていただきます。また、内視鏡
だけでなく、CT 等の必要性があることもあり、そのような場合は、武蔵国どうぶつ医療センターと連携しなが
ら、検査・治療を進めることができますので、ご安⼼ください。
※武蔵国どうぶつ医療センターでの検査の必要性がある場合も、クッキーペットクリニックにて診察させていた
だきますので、まずは受診をお願いいたします。

ワンちゃんとネコちゃんの乳腺のトラブル ―乳腺腫瘍―

【こんなことはありませんか?】
•お腹にしこりができた
•最近そのしこりが大きくなった気がする。しこりの数が増えた。
•なんとなく元気がない
上記の症状が複数回ある → すぐに受診してください。

【この記事のトピック】
•乳腺腫瘍は雌の犬猫(特に高齢)に多くみられる腫瘍性疾患です。
•ホルモンが関係することが知られており、未避妊または避妊が遅れてしまった犬猫での発生が多いとされています。
•特に猫の乳腺腫瘍は悪性が8割以上を占めるため、早期の腫瘍切除が推奨されます。

【乳腺腫瘍とは】
乳腺を構成する乳腺細胞が腫瘍化する病気です。犬と猫では特徴が異なりますが、どちらも悪性の場合には進行することでリンパ節、肺、腹腔内臓器などに転移します。良性であっても時間経過とともに悪性腫瘍へと転化することがあります。また早期の避妊手術によって乳腺腫瘍が発生する確率を下げることができます。犬も猫も未避妊雌は避妊雌の約7倍の発生率とされています。
(犬の乳腺腫瘍)
良性:悪性の比率はおおよそ1:1であり、悪性のうち転移を生じるものは半数程度とされています。そのため多くの症例では適切な治療により比較的良好な予後が期待できます。ただし前述したように良性であっても後に悪性転化する危険性があるため、長期間無治療で放置することは推奨されません。転移箇所はリンパ節(腋窩、鼠径)、肺、内外腸骨リンパ節、胸骨リンパ節、肝臓、骨などです。
初回発情前に避妊手術を実施することでその後の乳腺腫瘍の発生率が0.5%まで低下することが知られています。初回発情後で8%、2回目発情後で26%とされているので発生率低下には早期の避妊手術が効果的です。
(猫の乳腺腫瘍)
犬と違って85%以上が悪性です。皮膚や皮下織や腹壁に強い浸潤性を示し固着を認めることが多く、半数以上は複数の乳腺に存在しています。そのため犬よりもより積極的な治療介入が必要となります。転移箇所はリンパ節(腋窩、鼠径)、肺、胸腔内リンパ節、胸膜、肝臓、横隔膜、副腎、腎臓などです。
生後12か月以内に避妊手術を実施すると90%が未避妊雌と比較して発生率が有意に低下するとされています。

【診断の進め方(当院の場合)】
1.問診・身体検査(腫瘤の発生時期、拡大傾向の有無、個数と位置、避妊時期、既往歴など)
2.細胞診(そもそもしこりが乳腺腫瘍を疑うものかどうかの判断のため。お腹にできるしこりは他の腫瘍や非腫瘍の可能性もあります。)
3.血液検査
4.画像検査(レントゲン・超音波)
5.全身麻酔下での検査(CTによる原発巣および転移の評価)

【治療の選択肢】
・外科療法
基本的には外科手術が第一選択となります。選択すべき術式は動物種の違い、腫瘍の大きさや数、周囲組織への浸潤性などにより異なります。
犬の場合は主な方法として腫瘍のみの切除、罹患乳腺のみの切除、乳腺区域切除(第1,2,3あるいは第3,4,5)、片側あるいは両側乳腺切除が挙げられます。
猫の場合には犬と比較して腫瘍の浸潤性が強く、腫瘍が発生した乳腺のみを摘出する方法では高率に新たな病変ができてしまうため、転移の徴候が認められなければ腫瘍の大きさに関わらず片側あるいは両側乳腺切除が推奨されます。
・化学療法
犬については乳腺癌に対する化学療法の有効性は示されていません。
猫についても乳腺癌に対する化学療法は確立されていませんが、遠隔転移を起こした症例などでは化学療法との併用(あるいは化学療法単独)が行われる場合があります。

【よくある質問(FAQ)】
Q:早期に避妊手術をしても乳腺腫瘍が発生することはありますか?
A:はい。あくまでも発生確率を下げるのみであり、発生する可能性はゼロではありません。
Q:細胞診の検査をすれば悪性か良性かわかりますか?
A:予想がつく場合はありますが、診断はできないことも多いです。特に犬の乳腺腫瘍に関しては細胞診での良性悪性の判断は困難とされています。ただししこりが乳腺腫瘍であるのか、その他の腫瘍であるのか(肥満細胞腫など)、非腫瘍であるのか(炎症性病変など)を外科切除前に確認するのに細胞診は有用です。
Q:どのくらい生きられますか?
A:一概には言えませんが、犬ではリンパ節転移がある場合とそうでない場合の平均生存期間がそれぞれ8~17ヶ月、19~24ヶ月以上という報告があります。また腫瘍の大きさが5cm以上で未避妊の犬では術後2年生存率が低かったという報告もあります。猫では腫瘍が2cm未満で適切な手術がなされた場合の予後が比較的良好であるのに対し、3cmを超える場合には生存期間が4~6ヶ月という報告があります。早期発見は重要なポイントになります。

ワンちゃんとネコちゃんのけいれんのトラブル ―特発性てんかん―

【こんなことはありませんか?】
•時々よだれをたらしてボーっとする時間がある
•脚がピンと張って動かない時間がある
•身体の一部がぴくついて治まるを繰り返す
上記の症状が複数回ある → すぐに受診してください。

【この記事のトピック】
• けいれん発作の原因は様々であり、緊急性も違いますが、まずは血液検査で血糖値や、肝数値および腎数値を確認することが重要です。
• 血液検査およびMRI検査で異常が認められないてんかんの事を特発性てんかんと呼び、半数以上は適切な内科治療(内服薬)でコントロール可能です。
・発作が起きたら、近づいたり、抱っこしたりしてはいけません。まずは動物と人間の身の安全の確保が大事です。

【てんかんとは】
「けいれん発作=てんかん」ではありません。てんかんとは過剰に興奮した神経細胞たちのいわゆる暴走であり、それに伴って生じるけいれんをてんかんと呼びます。つまり脳自体の問題で生じるけいれん発作がてんかんです。例えばけいれん発作の中にはそれとは別に反応性発作があります。腎臓の機能不全により老廃物が身体に溜まってしまったり、肝機能障害によって栄養状態に異常が起きてしまったりすることによって生じます。それらは脳自体の異常ではないので、てんかんとは区別されます。

【てんかんの種類】
 てんかんは反射性てんかん、特発性てんかん、構造的てんかんに分類されます。
◇反射性てんかん
 反射性てんかんとは、何かが引き金となって発作が生じるてんかんです。眩しい光や、インターフォンの音や金属音、トリミングに行く等、五感や経験が引き金になり得ます。自分の経験上では、掃除機の電源コードを引き抜くガラガラガラという音で必ずけいれん発作が起こるわんちゃんが居ました。

◇構造的てんかん
 生まれつきの奇形や、脳炎、脳腫瘍などがここに分類され、脳自体に異常が生じているてんかんのことを指します。1歳未満や8歳以上の子のタイミングで初めて発作が起きたときはこの種類のてんかんを主に疑います。診断には麻酔をかけた画像検査(CT・MRI)が必要不可欠です。

◇特発性てんかん
 特発性とは特定の原因が分からないという意味で、特発性てんかんとは血液検査や画像検査など種々の検査で異常が認められないてんかんを指します。検査の異常は認められないものの、厳密には脳内の神経細胞が何らかの原因で異常に興奮(発火)し、それが一部分のみで終息せず、より広範に広がって発作を生じています。こうしたミクロレベルの異常であるため、検査結果は正常ながらも、発作は起きてしまいます。原因として遺伝性や家族性など血縁関係が疑われていますが、正確には明らかになってはいません。

【てんかんの治療】
 前述のとおり、てんかんといっても様々な病気が背景にあります。以下の表は原因によっての治療法を簡潔にまとめたものです。実際には画像結果や本人の症状に合わせて複合的に対応するケースがほとんどです。

【もし発作が起きたら】
初めて発作が起きたら、つい発作を落ち着かせるために近づいて手を添えたり、抱っこしたりしてしまうオーナー様もいらっしゃいます。ですが、発作が起きている動物は脳の興奮が抑えられず、顎や手足にいつも以上の筋力がはたらいているため危険です。発作が起きたら、まずは動物の安全を確保するために周りにクッションやタオルを置いてあげてください。発作が起きている動物には基本的に近付かないことが、オーナー様と動物の双方のケガ防止に繋がります。
もし余裕があれば発作が起きる前の本人の様子や発作時、発作直後の動画撮影、発作が起きていた時間まで確認できれば助かりますが、初めて発作を見たときはこのまま亡くなってしまうのではないかと思うほどショッキングで余裕がないと思います。まずは近付かず、周りの安全を確保することが何より大事です。