子犬・子猫の下痢

【こんなことはありませんか?】
• 購入後や譲渡後、一週間もたたずに下痢が始まった。
• 下痢だけではなく、粘液便や血便を認めた。
• 下痢と共に元気食欲も低下してきた。
• 下痢が続いていたが、急に歩けないくらいふらつき始めた。
上記の症状がある → すぐに受診してください。

【この記事のトピック】
• 子犬・子猫を購入・譲渡後すぐに起こる下痢はとても多く、原因に特徴があります。
• 環境の変化、寄生虫によるものが主な原因です。
• 食欲低下により、食べない状態のままにすると低血糖で倒れるため、早めに動物病院を受診しましょう。

【原因(購入・譲渡直後に多いもの)】
1. 環境変化によるストレス(最多)
・親・兄弟・元の環境からの分離。
・温度・湿度・生活音の変化。
・移動(輸送)
⇒ストレス性腸炎(環境変化で食欲不振に陥ることもある)。
⇒多くは軽度〜中等度の軟便〜下痢。

2. 食事関連
・急なフード変更
・フードの与えすぎ
・おやつ・人の食べ物
・子猫:ミルク不耐性
⇒お迎え後2–3日以内に発症しやすい。

3. 寄生虫・原虫
・回虫(お腹が膨満する事がある。嘔吐すると回虫が出てくることがある)
・ジアルジア(下痢~水様便。腸の免疫が弱いと感染が長引くことがある)
・コクシジウム(血便が混ざることがある)
⇒ペットショップ・ブリーダーなど多頭飼育環境にて広がりやすい。
⇒一見元気でも下痢が続く。

ジアルジア栄養型虫体

ジアルジア栄養型虫体(顕微鏡写真)

4. 感染症(死亡する可能性あり)
・犬:パルボウイルス
・猫:猫汎白血球減少症(猫パルボ)
・コロナウイルス
⇒ワクチン未完了の月齢で要注意
⇒元気消失・嘔吐・血便・ぐったり。

5. 免疫未熟・生理的要因
・腸内細菌叢が未成熟
・母乳からの切り替え直後(そもそもフードに慣れていない)

【診断の進め方】
1. 問診
・お迎えから何日目か
・月齢・体重
・元のフードと現在のフード(フードの袋の写真があるとベター)
・ワクチン・駆虫歴(購入時の健診表やワクチン接種証明書を持参しましょう)
・下痢の性状(血便・粘液便を含んでいるか)

2. 初期検査
・糞便検査:直接法、浮遊法(寄生虫/原虫チェック必須)
・ジアルジア検査(院内検査キット)
・犬パルボ検査(院内検査キット、必要に応じて)
・猫パルボ検査(院内検査キット、必要に応じて)

3. 追加検査(重症時)
・血液検査(脱水・低血糖・炎症の有無)
・画像検査(エコー検査などで腸閉塞など除外)

【治療】
軽症(元気・食欲あり)
・フードを元のものに戻す/切り替えを中止
・消化器用療法食(子犬子猫用あり)
・整腸剤・プロバイオティクス
・必要に応じて止瀉薬

寄生虫・原虫が疑われる/確認された場合
・駆虫薬(回虫)パモ酸ピランテルなど
・抗原虫薬(ジアルジア・コクシジウム)メトロニダゾール、トルトラズリルなど
・環境消毒(二酸化塩素など)、同居動物チェック

中等度〜重症
・皮下 or 静脈点滴
・抗菌薬(細菌性腸炎・二次感染対策)
・制吐剤・胃腸保護薬
・入院管理(特にパルボ疑い)

【まとめ】
・お迎え直後+元気あり…ストレス、食餌の影響を疑います。
・下痢が数日以上持続…寄生虫、原虫の関与を疑います。
・血便、嘔吐、元気消失…ウイルス感染を疑います。
・体重が増えない…慢性寄生虫感染を疑います。
・環境変化による下痢はよくあります。
・子犬子猫は悪化が早いので経過に気を付けます。
・便検査は必須です。
・ワクチン接種が完了するまでは注意しましょう。

【自宅での注意点、予防・対策】
・お迎え後1週間は環境を最小限にしてストレスから守りましょう。
・フードは急に変えないようにしましょう。
・早期の便検査・駆虫を実施しましょう。
・ワクチン計画を徹底しましょう。

【よくある質問FAQ】
Q1.子犬・子猫の下痢はよくあることですか?
A.はい、比較的よくみられます。
子犬や子猫は消化器が未熟で、環境の変化や食事の変化、ストレスの影響を受けやすいため、下痢を起こしやすい時期です。ただし、重症化しやすい年齢でもあるため、軽く考えすぎないことが大切です。

Q2.どんな原因で下痢になりますか?
A.原因は一つとは限りません。
・食事の変更・食べすぎ
・新しい環境によるストレス(購入・譲渡直後など)
・寄生虫感染
・ウイルス感染
・細菌感染
・誤食(異物・人の食べ物など)
特に迎えたばかりの時期は複数の原因が重なることもあります。

Q3.元気なら様子を見ても大丈夫ですか?
A.軽度であれば短時間の様子観察は可能ですが注意が必要です。
以下の場合は早めの受診をおすすめします。
・食欲がない
・元気がない
・嘔吐を伴う
・血便が出ている
・水のような下痢が続く
・半日〜1日で改善しない
子犬・子猫は脱水が急速に進むため、悪化が早いのが特徴です。

Q4.下痢のときはごはんを止めた方がいいですか?
A.自己判断で絶食させるのはおすすめしません。
成長期の子犬・子猫は低血糖になりやすく、長時間の絶食は危険です。
食事量や内容の調整が必要な場合があるため、できれば獣医師にご相談ください。

Q5.家でできることはありますか?
A.以下を観察しておくと診察に役立ちます。
・下痢の回数・期間
・便の状態(軟便、水様、血液、粘液)
・食欲・元気の有無
・嘔吐の有無
・新しく食べたもの
可能であれば便を少量持参していただくと検査がスムーズです。

Q6.下痢は他のペットにうつりますか?
A.原因によっては感染します。
寄生虫やウイルス性の場合、同居動物へ感染する可能性があります。
下痢をしている間は、
・トイレをこまめに清掃する
・便に触れた後は手洗いする
・食器の共有を避ける
などの対策を行いましょう。

Q7.ワクチン前でも受診して大丈夫ですか?
A.もちろん大丈夫です。むしろ早めの受診が重要です。
ワクチン未接種の子犬・子猫は感染症に対する抵抗力が弱いため、下痢症状がある場合は早期診断・治療が大切です。

Q8.すぐに治る下痢と危険な下痢の違いは?
A.次の症状があれば要注意です。
・ぐったりしている
・嘔吐が続く
・血便・黒い便
・発熱や震え
・急激な体重減少
これらは重篤な病気のサインの可能性があります。

休診のお知らせ

3/31(火)は棚卸し作業のため、終日休診となります。フードや薬の購入、電話対応もできませんので予めご了承ください。

院長

ワンちゃんとネコちゃんの眼のトラブル ―眼が開けられない―

【こんなことはありませんか?】
• 明るい場所で眼を細める。
• ⽬のまわりを前⾜でこする、こすりつける。
• まぶたを強く閉じて開けたがらない。
• 眩しいときに鳴く・落ち着きがない・顔を触られるのを嫌がる。
など

以下に該当する場合は、すぐに受診してください。
• 突然、⽚眼だけ強く閉じて開けない。
• 涙や⾚⾊の液体が眼から出ている。
• 眼が⾚い/⽩く濁る/急に⼤きくなったように⾒える。
• ⽚⽅だけ瞳の⼤きさが違う。
• 元気・⾷欲の低下や嘔吐など、全⾝状態の悪化を伴う。
など

⾓膜穿孔(⾓膜に⽳が開いてしまう)
急性緑内障
⽔晶体脱⾅(⽔晶体が本来とは別の場所に落ちてしまう)
重度ぶどう膜炎

などが疑われます

【この記事のトピック】
明るい場所で⽬を細める、暗い所にばかり⾏きたがる、⽚⽬だけ細めている…。
こうした「まぶしがる」しぐさは、医学的には羞明(しゅうめい)=光を嫌がる症状と呼びます。
単なる癖や仕草の場合もありますが、多くの場合は「⽬が痛い」「⽬に違和感がある」というサインです。
眼の中で痛みを感じるのは、主に⾓膜と虹彩・⽑様体(前部ぶどう膜と総称されます。)、眼球周囲の組織であり、三叉神経という神経が関与します。

【原因として考えられること】
-眼局所の疾患-
眼瞼疾患
⾓膜疾患
⽔晶体疾患
網膜疾患
その他

など

-全⾝性疾患-
免疫介在性(免疫異常)疾患
ホルモン疾患
⼦宮蓄膿症
全⾝性⾼⾎圧
感染症

など

【診断のための主な検査項⽬(当院の場合)】
※患者様の状態、年齢などに応じて検査内容を決めていきます。
• 視診
• 触診
• スリットランプ検査
• 涙液量検査
• ⾓結膜染⾊試験
• 眼圧測定
• 眼底検査
• 眼球超⾳波検査
など

【治療の基本⽅針】
原因によって内容は⼤きく変わりますが、代表的には、

点眼薬、眼軟膏:抗⽣剤、抗炎症薬、⾓膜保護剤、鎮痛剤など
外科⼿術や保護⽤コンタクトレンズの設置が必要となるケース
背景に全⾝性の病気がないかの各種検査(⾎液検査、レントゲン検査、超⾳波検査、、、)

など

【よくある質問(FAQ)】
Q. しばらく様⼦を⾒ても⼤丈夫?
A. 気になる症状がある場合は、元気そうであっても早めの受診をお勧めいたします。
Q. ⽚⽬だけまぶしがるが、元気だし様⼦を⾒てもよい?
A. ⽚⽬だけの羞明は「その⽬に痛みがある」可能性が⾼く、⾃⼰判断での放置はおすすめできません。軽い結膜炎であっても、放置すると症状が重症化することもあります。また、眼だけの問題なのか、それとも前進性の問題なのかの⼿掛かりになる場合もあります。

ワンちゃんとネコちゃんの咳のトラブル ―ケンネルコフ―

【こんなことはありませんか?】
• 子犬を迎え入れたら1週間も経たないのにケッケッと咳をし始めた。
• 安静時や就寝中も咳が出て辛そう。
上記の症状がある → すぐに受診してください。

【この記事のトピック】
• 迎え入れたばかりの子犬が咳をしていたら、ケンネルコフを疑いましょう。
• 咳の症状以外は、特に問題がないことが多いです。
• 動物の移動のストレスや環境の変化が発症の誘因になることがあります。
• 1~2週間の内服薬の投与で治癒する事が多いが、症状が長引いたり悪化したりする時は、早めに病院を受診しましょう。

【ケンネルコフとは】
• ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)は、ウイルスや細菌が混合感染して起こる呼吸器の病気です。
• ペットショップ、ブリーダー、保護施設など多頭飼育環境で感染しやすいです。
• 子犬・免疫力の低い犬は特に注意が必要です。
• 人の「風邪」に近いイメージです。
• 子犬を購入後、数日〜1週間前後で発症することが多いです。

【主な症状】
よく見られる症状
• 乾いた咳(ケッケッ、コンコン、ガーガー)。
• 咳き込むと吐くような仕草(嘔吐ではない)。
• 興奮時・運動後・首輪を引いた時に咳が出やすい。
• 透明〜白っぽい鼻水。

重症化すると
• 元気・食欲低下。
• 発熱。
• 黄色や緑色の鼻水。
• 肺炎(特に子犬は注意)。
※「元気はあるが咳だけ」というケースも多いです。

【診断の進め方。当院の場合】
1.問診
• 購入時期と他犬との接触歴を伺います。発症までの病気の潜伏期間の推測に必要です。
• 食欲と元気を確認します。子犬のケンネルコフでは咳以外は問題なしというケースが多いのでこれらの低下は重症を疑います。

2.身体検査
• 咳の性質(乾いた咳、湿った咳、ゲッと吐くような咳など)、聴診にて心音と呼吸音の確認を行います。呼吸音の異常や亢進は気管支炎や肺炎を示唆します。
• 必要に応じて、レントゲン検査にて気管支炎や肺炎の有無を、血液検査にて炎症の程度(白血球数、CRP)を評価します。
• PCR検査(原因病原体の特定)が必要になることは稀です。
※多くの場合、症状と経過から臨床診断されます。

【治療方法】
症状の程度によって治療が変わります。

軽症の場合
• 気管支拡張薬:気管支を広げて呼吸を楽にします。また、気道粘膜を保護し、痰の排泄を助けます。
• 去痰薬:痰の排出を促します。
• 咳止め薬:咳の頻度を減らし、気道の炎症を軽減し、呼吸を楽にします。
• 抗炎症薬:気管支炎などの炎症を軽減します。
• 安静、保温、適度な保湿をします。
• 自然に回復(1〜2週間程度)することもあります。
※当院では、ケンネルコフでは気管支拡張薬(アミノフィリン)、去痰薬(アンブロキソール)を主に処方しております。

細菌感染が疑われる場合
・抗生物質を処方します。
※当院では、ケンネルコフではアジスロマイシンを主に処方しております。

重症・肺炎を伴う場合(まれ)
• 点滴治療
• 酸素吸入
• 入院管理(子犬ではまれに必要)

【自宅での注意点】
• 興奮させないようにしましょう。無理な運動も避けてください。
• 首輪よりハーネスを使用しましょう(頚部の気管を圧迫しない)。
• 他の犬との接触を避けましょう(感染防止)。
• 室内を乾燥させすぎないようにしましょう。
• 十分な水分補給をさせましょう。
• 症状悪化(咳が続く・元気消失・食欲不振・呼吸が苦しそう)があればすぐ病院を受診しましょう。

【予後と予防】
• 多くは適切な治療で完治します。
• ワクチン(混合ワクチン)で重症化予防が可能です。
• 子犬購入後は早めの健康チェックをおすすめします(飼育初心者の方の中には咳をそれと気づかないことがあります)。

【よくある質問FAQ】
Q1. 子犬でもかかりますか?
A. はい、子犬は特にかかりやすいです。
免疫が未発達なため、ペットショップ・ブリーダー・ドッグラン・動物病院など、犬が集まる場所で感染することがあります。

Q2. 他の犬や人にうつりますか?
A.犬同士ではうつります(感染力は強め)が、人には基本的にうつりません。
治るまでは、他の犬との接触は避けましょう。

Q3. 動物病院に行く目安は?
A. 次の場合は早めに受診してください:
• 咳が3~5日以上続く
• 咳がどんどんひどくなる
• 食欲・元気がない
• 黄色や緑色の鼻水が出る

Q4. 治療期間はどれくらいかかりますか?
A.軽症の場合は、1~2週間程度で回復することが多いです。
薬(咳止め・抗生剤など)が処方された場合は、獣医師の指示どおり投薬しましょう。

Q5. 予防はできますか?
A. 完全ではありませんが、以下でリスクを下げることができます。
• 混合ワクチン接種
• 子犬期は犬が密集する場所を避ける
• 体調が悪い犬との接触を避ける
• ストレスを減らす

Q6. 咳が治ったらすぐ散歩をしてもいいですか?
A.完全に咳が止まってから、数日~1週間が経過したら、散歩を再開するのが安心です。
再発や他犬への感染防止のため、獣医師の指示に従いましょう。